「……やめた。 悪いほうに考えちゃうだけだ」 クローゼットを開けても、可愛い洋服なんてない。 唯から貰ったものなんて、あたしには似合わない。 「ジャージでいいかなぁ」 夜走るように買った、紫のラインが入っている黒いジャージ。 かっこいいし。 春には寒さにも丁度いい。 コンコン。 小さくドアをノックする音が聞こえた。 「お母さんよ、いい?」 「うん。何?」 いつもより泣いた目をしているお母さんは、震えていた。