ふと先輩を見ると。 「あれ、ピアノ…?」 古いピアノの前に先輩は座っていた。 「うん。今は使ってないみたい。 ちょっと弾いてみる?」 「ダメでしょう。そっとしとくのが…って。 聞いてくれませんね」 「あ、でも使えそうだよ」 「…勝手にいいんですかね」 「いいよ。うん、平気」 掴みどころのない人だなぁ。 先輩は軽い手つきで、ピアノを弾き始めた。 「え、先輩ピアノできるんですか?」