ちらりと視線だけずらすと、そこには―。



「かすみちゃん。いる?」




あの先輩がいた。


無論、周りの女子から睨まれる。


あ。

もしかしてあの先輩。



3年生で一番チャラくて人気の…。

また面倒な女関係になりそう。



あぁいうのは無視だ、無視。




「ねぇ、」




ガタッと前の席が動く。


あたしの視線は机のまま。




「何で俺を見てくれないの?」



甘い声が聞こえても、あたしは何も言わない。