「おや~~。
 あなたは、篠原さんのお友達だったんですかぁ~~?」

 風ノ塚は、思わず席を立ったオレを見て、微笑んだ。

「最近、あなたが通って来てくれるおかげで。
 店の売り上げも上がってるんです~~
 いつか、お礼を言おうと思っていたところで、嬉しいです~~ぅ」

 言って風ノ塚は。

 だいぶ年下のオレみたいなヤツに、何の気負いも無く、頭を下げた。

 今までにあったことの無いタイプに、オレは、完全に調子を崩して。

 オレは、別にあんたのためにここに通って来ているわけじゃねぇし。

 ここのケーキとオレの顔が気に入っているらしい、客達は、勝手に入ってくるだけだ。

 ……とは、とても言えずに。

「……はあ、それは、どうも」

 なんて、思わず間抜けな答えを返す。

 一方で、由香里は。

 風ノ塚の言葉に目を丸くした。

「何、雪。
 そんなにしょっちゅう来てたの?
 いつから?
 あたし、ぜんぜん気がつかなくて……」

 そうだろうとも。

 由香里は、いつだって。

 目の前のケーキを崩さずに運ぶので、一生懸命だったから。

 ……多分、気がつかないんじゃないか、とは思ってた。