そういいながら、由香里の顔を見て。
オレは、ごまかすように、大げさに驚いてみせた。
「……げ。
口の周りと顔に、クリームが一杯ついてるぜ。
ガキが食ったあとみてぇだな」
「え?
あらやだ……本当?」
由香里は、笑って、何も無い場所に手を伸ばした。
「もしかして。
ケーキの箱に入っている、紙ナフキンを取ろうとしてる?
……ここだぜ?」
「ありがとう」
手を伸ばした場所からだいぶ離れた所にあるナフキンの束を、ちゃんと由香里に手渡したはずなのに。
由香里は、ナフキンを全部、はらはらと、テーブルの上にとり落としてしまった。
「……んっとに、不器用なヤツ」
あきれて、新しいのを差しだしたとき。
偶然、由香里の手に触れて。
変なことに気がついた。
「……由香里の手……すげぇ冷たい……?」
「……っ」
「え?」
冬。
雪に触った直後のような。
いや。
氷そのもののような指の触り心地もさることながら。
自分の手に触れる、オレの手に気がついて。
手を引っ込める動作が変に不自然で。
オレは、こっそり落ち込んだ。



