危険な愛を抱きしめて

 



 ……魔法の箱かと思った。




 箱は、ふつうのケーキが入っている箱だった。

 正直、甘いモノが苦手なオレは。

 由香里の持ってきたモノにあまり期待してなかったけれど。

 由香里の持ってきた紙箱が開かれたとたん。

 目を見張った。

 中には、月光に輝く宝石が入っていた。



 ……と思った。



 赤や、黄色のフルーツ飾り。

 レースみたいな飴細工。

 ふわりと舞い降りた、チョコレートや、シュガー



「なんだ?
 これは………」




 すげぇ、キレイだ。


 オレは。



 その、繊細な細工の見事さに思わず呟いた。


「うふふ……ケーキ」

「……だろうけれど、今まで……こんなキレイな奴……見たことがねぇ」

 思わず出たため息と一緒に呟くと、由香里は、微笑んで言った。

「あたしが最近初めたバイト先で売っているケーキでね。
 すごくキレイでしょう?」

「ああ」

 由香里の言葉に、オレは、ぼんやり頷いた。

「じゃ、食べよっか?」

 由香里にフォークを手渡され、オレは、慌てて首を振る。