由香里は、また、そう、無茶なコトを簡単に言う。
廊下をフツーに歩いて、庭に降りたら。
看護師に見つかって、病室に連れ戻されてしまうに決まってるじゃないか。
オレが、まわりをざっと見渡すと。
昼間、由香里が鳥と遊んでいた一階のひさしに降りれば、そこから更に下へ行けそうなコトに気がついた。
「雪~~早く~~~」
「そんなにせかすな……由香里。
なんでオレが今日、ここに泊まっているか、知ってるよな?」
「雪なら、大丈夫。
三歩もあれば、汗もかかずに降りてこられるわよ」
……まったく。
昼間、あれだけ言われたのに。
何だって由香里の言うコトを聞く気になったのか。
「……我ながら、あきれる……」
「雪、何か言った?」
「……何でもねぇよっ!」
オレは、紅茶のペットボトルを二つつかむと。
窓枠に足をかけて、由香里の待つ闇夜に、飛び出した。



