危険な愛を抱きしめて

「……知ってるけどな。
 仲のわりぃ家同士なのに、恋人になっちっまった二人が。
 駆け落ちに失敗して死ぬ話だろう?
 オレは、ハッピーエンドで終わらねぇ芝居は嫌いなんだ。
 それに、そもそも何でオレが女のジュリエット役なんだ」

「ロミオがジュリエットに愛をささやくとき、彼女は大抵二階の窓辺に座ってんのよ。
 今の雪みたいに。
 それに。
 雪って特別キレイだから、いいじゃない。
 女の子のジュリエット役も、ピッタリよ?」

「……莫迦」

 まったく、何を考えているんだか。

 不機嫌に、鼻を鳴らすオレを、由香里はくすくす笑って、言った。

「……ねぇ。
 せっかくだから、雪も降りてこない?
 おやつがあるから、庭で、一緒に食べようよ」

「……げ。
 今からモノを食うのか?
 太るぜ?」

「大丈夫よ。
 少しくらい。
 それより雪は、何か飲み物持ってきて?
 あたし、急いで出てきたから、お茶を持ってくるの忘れちゃったの」