実際にホールに出て、客の相手をするかどうかは。

 後からでも、薫が自分で決めれば、いい。

 オレがやってほしいことは。

「……ホストじゃねぇ……経営の方……
 しかも……最初は……薫が……仕事を覚えるまで
……あんたは……オレに名前を貸してくれる……だけでもいい」

「……?」

「最初は……必要だったから……無理やりやっていたのに……な」

 今は、クラブの№1、2、3、の座を賭けて、他のホスト数名と激戦の真っ最中だ。

 今まで、やれば何でもできていたオレが。

 初めて挫折感を味わったのが、ホストの仕事だった。

 それが、ちょうど上向きになりかけ、面白くなってきたところだった。

 もし、ここで、何回も№1を獲得して、資金が貯まったら。

 ショコラの店から独立して、自分の店を持っても面白い、かもしれない、と思っていた。

 だけども、その一方で。

 由香里と約束した『教師』の道も捨てがたかったし。

 クラブの経営が上手く行く前に、クソ親父にバレると、また。

 なにやかやと、横槍を入れてこられそうで、面倒だった。