黙って肩をすくめる薫に、オレは、ため息をついた。

「本来なら……オレが……
 あんたのことを……心配する義理は……ねぇ……が。
 高価(たか)い……薬を……丸々一瓶……と。
 何よりも……由香里の声で……オレに未来を……くれたから。
 オレの方からも……あんたに……渡せる……未来が……ある」

「……なあに?
 医者が廃業させられたら、紫音と一緒に。
 風ノ塚さんのところで、ケーキ屋さんのアルバイトをしようって言うの……?」

 薫の言葉に、オレは、それは出来ない、と首を振って言った。

「……オレと……一緒に……
 ホスト・クラブを……やって……みないか……?」

「……は……?」

 オレの提案に、薫の目が点になる。

 よほど、予想外のことだったらしい。

 ヤツは、混乱したように、オレの目を見た。

「……あたしに、ホストになれって言うの……?」

 それは、かなり無理があるんじゃないかと。

 ホストのことなんて、少しも知らない自分が、出来ることじゃねぇ、と言う薫に。

 オレは、かすかに笑ってみせた。