「クソ親父との話での妥協案は。
 学校の教師って言う線だけど……
 まともに、高校を出てないオレが、ガッコのセンセなんて、笑えると思わねぇ?」

「あら……いいじゃない。
 ……出来れば……わたし……やりたかった……もの」

 知ってる。

 日本史の教師だろ?

 だから、やろうか、と思ったんだ。

 一番の希望になれなくて、後はみな同じ、だというのなら。

 由香里がやりたくても……たぶん。

 これからなれる見込みのねぇモノに、オレが代わってなってもいいと……思ったから。
 
「……でも。
 それもまた……雪が本当に……
 なりたいものなの……?
 年号とか覚えるの、嫌いだって言ってたじゃない」

 気遣わしげに、由香里はため息をついた。

「人生は……一度きり、なのよ?
 わたしのために……頑張ってくれるのは……とてもうれしいけれど……
 雪も……
 出来るだけ……自分の思うままに生きなくちゃ……後悔するかも……」

 いや。

 いいんだ、大丈夫。

 オレの今、一番したいことは……

 色々な意味で、由香里と一緒に生きること、だから。

 そのために、今、オレは。

 どんなに汚れても、立ち上がって、歩いているんだ。

 由香里のやりたいことは、オレのやりたいことでもある。

 だから。

 ……後悔なんて、するものか。