けれども。

 まさか、本当にげらげらと笑うわけにもいかず。

 黙ってしまったオレに、由香里は心配そうに首をかしげて言った。

「ねぇ……雪。
 大学の勉強が忙しくても……
 ケーキ屋さんのバイト、続けてる?」

 そう、由香里に切りだされて、オレの心臓が、ドキリと鳴った。

「……なぜ?」

「最近……
 ケーキをお見舞いに持ってきてくれるヒトの中で……
 風ノ塚さんのケーキ屋さんに……
『王子サマ』がいなくなったね、なんて言う噂を聞いて……」

「……」

「……それに。
 新しいホストクラブに通ってる、看護師さんの一人が……いるんだけど……
 雪みたいな背恰好の……すごく若いホストが最近……
 とても人気が出てきたって……」

「……狭い、街だな」

 思わず、ぽろりと口から出た言葉に。

 由香里が目を見開いた。

「まさか、それって……!」

 由香里が、何か言いだす前に。

 オレは、ベッドから身を起こすと、両手を挙げた。