オレは、その音を避けるように。

 ココロの耳を塞いで、穏やかに笑った。

「久しぶりに来たのに、眠ってばかりで、悪かったな。
 つまらなかったろ?」

 オレが苦笑すると、由香里はううん、とクビを振る。

「……なんか……雪……
 ちょっと見ないうちに……キレイになったような気がして……
 寝顔を見てても……飽きなかったわ。
 もちろん、前からカッコ良かったけど……
 なんか、こう……キレイさに迫力を増したっていうか……
 アダ花っぽく……男のクセに、色っぽくなったって言うか」

「……なんだ、そりゃ」

 とは、言ったものの。

 心当たりは、ある。

 それは。

 オレがキレイになったからじゃねぇ。

 ……汚れたからだ。

 もう、オレの未来を祝福してくれた、風ノ塚にも顔向けできないほどに。

 ショコラと、さやかの予想道理。

 最初の指名客を得てから、いきなり忙しくなったかと思うと。

 それから先は、もう転がるように。

 薬と、女にまみれて、汚れきってしまったから。

 金のために抱いた女の数だって。

 もう。

 九条の二人を除いても、十本の指では、おさまらねぇはずだ。

 由香里が言った『アダ花』が妙に鋭くて、笑えた。