まともに、アヤネの顔なんざ、見られなかった。

 表情無く……と言うか。

 どんな顔をすればいいのか判らないまま。

 オレが言った言葉に、アヤネが、反応した。

「音雪がホスト!
 いつから!?
 信じられないわ!」

「……一カ月前から。
 源氏名は『紫音』と言う」

「……う……そ……」

 アヤネは、崩れ落ちるように座り込んで、つぶやいた。

「音雪は、ホストだから……
 お金を積まれて、お母さんと付き合うの?」

「……」

「お金さえ、払えば。
 ……誰でも、抱くの?」

 ……そんなことは、ねぇ、とは。

 もう、言えなかった。

 苦い……

 ……苦い心を絞り出すように。

「ああ」と答えると。

 アヤネは、きっ、とオレを睨んで、言った。

「だったら……幾らで買えるの?」

「……え?」

「『紫音』は、一晩、幾らで買えるの!?
 教えて!?
 お金なんかで、済むのなら!
 わたし、幾ら出しても『紫音』を買うわ!!」