オレを心配して、自分のカラダを顧みずに、来てくれた由香里を。

 改めて、とても愛しいと、思った。

 例え、オレ自身に何の力もなく。

 未来(さき)が闇に閉ざされていたとしても。

 せめて。

 現在(いま)を由香里と一緒に生きていくための、努力だけは。

 オレの全てを賭けてでもやっていこうと、思った。




 後になって、冷静に考えれば。

 ……もしかしたら、この強い思いは。

 純粋な『愛』とか『恋』ではなかったかもしれなかった。

 その時、抱えていた。

 解決できない問題から生まれる鬱憤(うつぷん)を。

 由香里への想いに託して、解消しようと思っていたのかも……しれなかった。

 だけども、あの時のオレに、そんなことは、わかるはずもなく。

 愛しい由香里を抱きしめて。

 これから先、何が起ころうとも、戦い抜くことを。

 そして、ココロだけは絶対に由香里を裏切らないでいようと。

 堅く誓っていた。




 ……腹さえ括ってしまえば、もう怖いものなんざ、なかった。