そう、オレの腕の中で。

 声だけは元気よく宣言した、何も知らない由香里に。

 まさか、本当のコトなんざ、言えるわけもなく。

 オレは、ただ、目を伏せた。

「……雪?」

「ああ、いや。
 ……いいんだ。
 これは、オレと薫の問題だし……
 たぶん。
 オレのキモチが、きっちり割り切ることができたら解決できる……」

 ……のか?

 今、この場で、両手に愛しいものを抱えながら。

 ショコラが言ったように、割り切る事ができるのか?

 なんて、考えることは、ひどく、辛かった。

 カラダとココロを切り離して、由香里だけを、まっすぐ愛してゆけるのか、と。

 それでも。

 どんなに不安があっても、必要とあれば。

 突き進んでゆくしかなかった。

 この。

 儚く。

 愛しい。

 愛しい命を守ってゆくために。