最悪な気分で、ただぼんやりと。

 手入れの行き届いている、村崎家の誇る日本庭園を。

 一分の隙も無いほどキレイな庭を眺めていた。

 何も考えず。

 親父の敷いたレールの上を走れば、楽なのは判ってた。

 だけども。

 今、眺めている庭のように。

 完璧に管理され、村崎に縛られるような人生は、送りたくなんざなかった。

 しかし、そう親に反発したい一方で。

 村崎に頼らない自分自身に、どれだけのことが出来るのか。

 そんなことも、判らないまま。

 悔しくて、ずっと手を握りしめていた。



 ……いつまで、そうしていたんだろう。

 胸の痛みを抱え。

 それでもようやく、うつらうつらとしてきたころ。

 かたん、という、乾いた高い音に気がついた。

「……?」

 音は、オレが向いていた窓と反対側の窓から聞こえてくる。

 何だろうと、のろのろと、寝返りを打ち。

 音の出所を確認して、驚いた。