「……んな、勝手な……!」

「それが、音雪のためなんだ!
 お前にはやろうと思えば、何でもできる才能も。
 普段は静かなクセに、一度火をつけたら、トップをもぎ取るまで走るガッツもある。
 どうせ、菓子作りなんぞ、すぐに極めて飽きるんじゃないか?
 無駄に才能を埋もれさせるなら。
 大学に行って、村崎家の切り回しに必要なことを学び、一雪の片腕になれ」

「イヤだ」

「金儲けがそんなにイヤなら。
 教師と言う手もあるぞ。
 大学を卒業したら、金持ちや、政治家の子息の通う学校に潜り込ませてやるから。
 若いうちに地盤を築いて、後から政治家にでもなれ」

「イヤだ……!」

 それでも、抵抗しようとするオレに。

 親父はため息をついて言った。

「どうしても、嫌だというのなら。
 使いたくないが、切り札を出す」

「なんだよ……!」

「お前のカラダには、心臓の手術のために億単位の金が動いている。
 本当に自由になりたかったら、それを全部返して、村崎家を出ていけ……!」