「ざけんじゃねぇ、クソ親父!
 ナニが、暴漢に刺されて重体だよっ!」

 親父にひっついている女達と、ついでに町谷を病室から追い出して叫べば。

 ヤツは、布団の上にのの字を書き書き言った。

「ええ~~
 父さん。ホントーに命は、危なかったんだぞ。
 ホラ、傷がここ。
 ざっくりイってるだろ?
 あと少しずれてたら死んでたってさ。
 すげーだろ」

 日本でも指折りの資産家で、政治にも影響力がある男は。

 そう言ってガキみたいに、刺された傷を自慢して、にぱっと笑った。

「それよか、お前。
 最近ちっともあってなかったが、風邪でもひいた?
 声が、すげー変だけど」

「オレのことは、どうでもいい!
 オレは、親父が重体だと……
 イノチに関わる……もうすぐ死んでしまうような、傷を受けたと思って驚いて、飛んできたのに!」

 ほっとしたのの裏返しで、怒りまくってるオレに。

 死にかけてるはずの当の親父は、相変わらず軽いノリで、しらっと言った。

「……だって。
 ちょっとぐらい大げさに言っとかないと、お前は見舞いにも来ねぇじゃん。
 事実、こんなに大騒ぎになっても来るのが遅せえし」

 可愛い息子に無視されたら、父さんは絶対泣くぞ、と脅す親父に、オレの頭痛が増した。