「市販の薬だって、なんだって。
 本来の使い道じゃないことで飲んだり、適量を超えた時点で、すでにアウト!
 絶対にダメなのよっ!
 しかも、もし習慣になってしまったら。
 薬に依存するようになったら、取り返しのつかないことになるわ!」

 だから、もう絶対にやめて! と。

 ショコラに言われて、オレは曖昧にうなづいた。

 オレ自身だって、あんな薬を飲むなんて、まっぴらだった。

 あの寒さをもう一度味わうのならば、雪の中で一晩過ごした方が、マシだった。

 だけども……

 だけども。

 あの薬に払う代金が、もし、由香里に使われるのならば、オレは。

 ……どんなことにも耐えるつもりだった。

「雪ちゃん!?」

 目を伏せて黙ったオレに、ショコラが叫ぶ。

 その、心配そうな顔に向かって、オレはちょっと笑ってみせた。

「ああ。
 もう、そんな薬なんて、絶対に飲まない」

 ……なんて言っても。

 たぶん、ウソだ。

 必要とあらば、オレはきっと。












 ……あの薬を断れない。