危険な愛を抱きしめて

「冷えて、カラダが動かないはずなのに……
 ずいぶん速い……
 重い拳をくれるわね?」

 ちょっと、引きつった顔で、ショコラが笑う。

「不用意に、ヘンなことを言った私も悪かったわ。
 もう、何も言わないし、聞かないから、とりあえず、中に入って?」

「……う……」

 よほど、寒さでカラダが弱っていたらしい。

 普通に受け止められた、オレの拳は。

 予想していたのより、はるかに弱いモノだった、けれども。

 ショコラが無事だった。

 無駄に、ヒトを傷つけずに済んだという。

 その、ホッとしたココロが引き金に。

 オレの中で、張り詰めたモノが急に緩んだ。

「……ちょっと、きみ……
 もしかして、泣いてる?」

「……るさいな。
 もう、何も言わないんだろ?」

 やっぱり少し……いや、かなり。

 自分自身も生意気だ、と思うオレの言葉に肩をすくめて、ショコラは、あらためて、自分の部屋の扉を開き……

 ……オレは。

 素直に、ショコラに従った。

 自分の目から、とめどなく。

 落ちてくる水滴を手で拭いながら。







 ……まるで、子供のように。