危険な愛を抱きしめて

「……!」

 その手は、オレを心配してくれていた。

 元気で、暖かな、オレの欲しかった、ぬくもりだった。

 だけども。

 一瞬。

 強い力に束縛された! と感じたとたん。

 オレは。

 身に染み付いた武術を使って、全力でショコラを殴っていた。

 いつもなら。

 ケンカを売って来る、腹立つヤツにさえ、遠慮することの多い拳だったのに。

 薫に抑えつけられ、弄ばれた記憶が溢れて、全く、自制がきかなかった。

 その必殺の拳を放ってすぐ。

 マズい!

 と自分の間違いに気づいたものの。

 スピードにノった拳は、もはや、引っ込めることが、できなかった。



「ぅあああっ……!」



 拳がショコラを捕らえて、ヤツが吹き飛ぶことが浮かび、オレは声を上げて目を閉じた。




 ……が。

 次に、聞こえてきたのは。

 拳が、みぞおちに食い込む『ぼすっ』と言う鈍い音ではなく。

『ぱしんっ!』と言う乾いた音だった。

 その音に、おそるおそる目を開ければ。

 ショコラが、自分の腹の前で両手を使って、オレの拳を受け止めているところが目に写った。

「……!」