「莫迦ね!
 放ってなんて、いけないでしょ?
 こんな冷たいカラダして!
 もし、寒さで死んじゃったらどうするの!?」

「オレは、死なねぇって……
 でも……もし、死んだとしても……
 見ず知らずのあんたが、困ることなんざ……
 何も、ねぇだろうに……?」

 オレの言葉に。

 女は、器用に手入れの生き届いた片眉をくぃ、とあげると。

 思いもかけねぇほどの強い力で、オレの胸倉をつかんだ。

 そして、軽々と、自分の目と目が合うの高さまでオレを持ち上げて、振りやがった。

「関係なんて、大ありよっ!
 きみ!
 ココは、私が経営するお店の目の前なんだから、ね!
 新年早々スタートの予定なのに!
 今、店の前でヒトなんて死んじゃったら。
 ゲンが悪くて、やってられないじやないのよっ!」

 だから。

 凍死したかったら、別なところでやって!

 なんて。

 女はめちゃくちゃなコトを言って、きゃんきゃん吠えた。

 話の内容はともかく。

 それでも憎めない女の口調に、オレはため息をついて、答えると。

 重いカラダを引きずって、立ち上がろうとした。

 そのとたん。