「……ちょっと!
 なんて量の雪を落としてんのよっ!
 ……いつから、ここに座ってるの?」

「……さあ?」

 本当に、覚えていなかった。

 座ったまま、びくともうごかず。

 ただ、クビを傾げるオレに。

 彼女の中で、ぷちっ、と何かがキレたようだった。

「さあ、って、きみ!
 こんなに雪で埋もれてて、寒くないの?」

「……寒くねぇな」

「ウソ!」



 ……本当。

 本当に、寒いのは。

 薫の薬。

 これに比べて空から降る雪の寒さ、なんて。

 まったく、大したシロモノじゃない。

 オレは、大丈夫だ。

 なぜか。

 外見ににあわず。

 一生懸命な感じの彼女には、悪いが。

 ……オレは、一人になりたかった。

「放っておいてくれ」と。

 女に聞こえるはずの声でつぶやいたのに。

 おせっかいな女は。

 オレの両肩を持って、がくがくと揺すった。