危険な愛を抱きしめて

 突っぱねるオレに、薫の目がすぃ、と細くなった。

「おいおい、そんなに毛嫌いするなよ?
 お前の婚約者のいる、九条家が、こっそり扱っている薬だぞ?
『アレクサンド・ライト』って言うヤツだ。
 ……知らないか?」

「聞いたことも……ねぇな」

 オレが言うと、薫は、鼻を鳴らした。

「裏の世界じゃ、ここ数年、大人気だ。
 薬の利権を獲得するために。
 九条家のお嬢さんが、なんども誘拐されかけるぐらいに、な」

「……ん、だよそりゃ……」

「次に、元締めになる予定のお前が、知らないはずは、ねぇと思うぜ……?
 この薬の一番イイところは。
 ごく少量だったら、市販の風邪薬にも混ざっていて……
 処方箋一枚で請求できる上。
 持っているだけでは、罪には問われないところだな。
 ……効き目は、折り紙つきなのに」

 そう言って、薫は、喉の奥でくくっと嘲笑した。

「知らないなら、他人に売り出す前に、自分のカラダでせいぜい試してみるんだな!
 その『寒さ』は、薬を飲むまで、何をしようと消えないぜ?
 お前は、この暖房のきいた暖かい部屋で、一人。
 毛布にくるまったまま、凍死する気か……?」

「……う」