危険な愛を抱きしめて

 ……何だって……!?

 なんて。

 聞き返す余裕なんざ、なかった。

  薫は、 突進するように、オレに向かって来たから。

 薫は、オレの両手首を、片手で一つかみにすると、ソファのすぐ後ろにある壁にオレの手を乱暴に固定した。

「……ってぇな!」

「るせぇ!
 由香里は、もっと痛いんだ!!」

 となりの部屋で眠る、由香里を起こさないように、か。

 薫は、低く、ささやくように怒鳴った。

「由香里の病気は!
 発作を起こすと、身体に激痛が来るって、わかってるはずだよな!?
 それなのに、あんな……!
 いつ、発作が来るか判らない状態の由香里を、抱きやがって!
 お前は、自制の利かない獣(けだもの)か!?
 しかも……!」

 薫の瞳が、殺気をはらんで、吼えた。

「しかも、てめぇには、別に婚約者がいるって言うじゃねぇか!
 由香里のコトは。
 上流階級ってトコロにいる、坊っちゃんの遊びか……!?」

「オレに、婚約者!
 そんなヤツはいねぇぜ!」

 一瞬。

 誰のことを言っているのか、判らずに言い返し。

 次の瞬間、思いだした。





 薫は、アヤネのことを言っているのか!?