「……なんだ、薫。
戻って来てたのか?」
完全に、眠りに落ちた由香里にそっと別れを告げて、部屋を出ると。
リビングのソファに、薫が座っていた。
ゴツい手には、ワイングラスを持って、中の赤い液体を、むやみに揺らしている。
ブドウの炭酸飲料だったら、絶対、気が抜けているだろうが。
その中身は、赤ワインだ、と強いアルコールの匂いが、伝えていた。
「……もしかして、酔っぱらってるのか?」
声をかけても、返事のない薫の顔を覗き込めば。
ヤツは、深刻そうに、眉間に深々とシワを寄せていた。
「……薫?」
もう一度、声をかけて、ようやく。
薫は、のろのろと顔を上げて言った。
「……ああ、音雪か。
今日は、誘っておいて悪かったな。
……急に、病院から、呼び出しが来て。
俺が担当している患者が……」
「……あんたの患者って。
金髪で、派手な服着たアタマと目つきが、悪そうなヤツら?」
オレの言葉に、薫はちょっと目を見開き……ため息をついた。
「……見てたのか?」



