……病院からの呼び出し?

 本当に、そうなのか?

 ここに、本人が居ない以上。

 街の隅で見たあれは、きっと。

 たしかに、薫で。

 どう見ても、一緒にいたのは、病院の関係者って言うより。

 ……由香里にノされて、病院送りになるのが、せいぜいの怪しい連中なのに。

「……雪?」

 オレが、黙って、心配になったらしい。

 小首を傾ける由香里に、オレは、笑ってみせた。

「なんでもねぇよ。
 薫も、医者の端くれなんだから、忙しいんだろ?
 それに、オレは。
 そもそも、由香里に、会いに来たんだし」

 言って、オレは。

 玄関先で、まだ靴も脱がないまま。

 上がりかまちに立つ由香里を、そのまま抱きしめる。

「……きゃ……っ!」

 オレの腕の中で、由香里が小さく驚いた。


 ……かわいい。


 由香里はまるで。

 カラダの全部を預けるかのように、抱きしめ返してくれるから。

 病気の具合のことも。

 彼女が本当は、だれが好きか、なんてことも。

 すべて忘れて、オレは、由香里の耳元に囁いた。



「メリー・クリスマス。
 愛してるよ。
 由香里」