「うぁ……寒っ!」

 深夜、と言うには、まだ少し早い時間。

 クリスマス・イブの街をオレは、自分の作ったケーキを持って、由香里の家に急いでいた。

 今年は、珍しく雪が降り、何年かぶりのホワイト・クリスマスだ。

 普段見慣れた薄汚れた街も、道も。

 枯れた公園の木々も、白い雪に覆われて、まるで別の世界に来たみたいだった。

 ただ、その中で。

 身を切るような寒さだけが、ここが現実の世界だと教えてくれる。

 自分の吐く白い息で、時々かじかんだ手を暖めながら、オレは。

 月光と。

 街灯と。

 ネオンで彩られた雪の街を歩いていた。

 夜も遅く、道を行き交うヒトビトもまばらで。

 皆、恋しい彼女や家族の元へ帰ろうと急ぎ足になっているようだった。

 ……その中で、ふと。

 見知った顔を見た気がして、オレは、足を止めた。

 車道の反対側をヒトの流れに逆らうように。

 歩いてくる四、五人ぐらいの。

 あまりガラの良くないグループの中心にいるのは……。


「……薫?」