「薫は、由香里が帰ってくるのが、嬉しくねぇのか?」

 オレの質問に、薫は昏くほほ笑んだ。

「いいや。
 もちろん、嬉しいが、こっちにはこっちの事情ってのがあってな」

 薫の言葉は、いちいち歯切れが悪い。

 この時は、きっと、薫は仕事が忙しくて、年末の休みが取れないのだろう、とぐらいにしか思ってなかった。

「個人的なことはさておいて。
 今日は、お前を誘いに来たんだ。
 この年末に、由香里が帰ってくるから。
 来週土曜のクリスマスイブの日に、ウチで、俺と、由香里と、音雪の三人でクリスマス会をしないか?」

「クリスマス会!
 また、そんなガキみたいな企画を……」

 オレが笑うと、薫が、むきになって言い返した。

「クリスマス・パーティーって言うには、規模が大きくないからだ!
 本当は、お前も由香里と二人だけで過ごしたいだろうが……一日ぐらいは、俺もまぜろ」

「しかも、イブの夜って……
 薫は、オレが今どこで何のバイトしてっか判ってるよな?」

 言われて、薫はぐるっと自分の周りを見渡した。

「……ケーキ屋」

「一年で、一番クソ忙しい日に、よくもまあ、誘ってくれる」

 苦く笑った、オレに。

 薫は、ちょっとだけ明るくなった。

「俺は、その日にしか休みが取れなかったんだが。
 ……音雪は、やっぱり無理か?」