「お……おう!
 そういえば、ここは、ケーキ屋だったな。
 後で、由香里の好きそうなヤツを二、三個包んでくれ……」

 そう、ぎくしゃくと話して、薫は、大きなため息をついた。

「……どうした?
 仕事でミスって、患者でも殺したのか?」

「なにを言うんだ!
 まさか、そんな……!」

 そう、血相を変える薫に、オレは、ぱたぱたと手を振った。

「もちろん、そんなことは無いだろう?
 ……が。
 薫の今の顔って、どう見てもそんな感じだぜ?」

 薫の落ち込み具合に、イヤな予感がして。

 オレも、そのまま、身を乗り出した。

 ……まさか……

「まさか、由香里の容態が急に悪化した、とか……!」

 由香里が、篠原病院よりも、更に設備の良い病院に転院してから、一ヶ月が経った。

 階段を一歩ずつ降りてゆくように、悪くなって行くのは、この際、仕方ないとしても。

 急に、転げ落ちるように悪くなったらどうしょうと、いつもの心配だった。