危険な愛を抱きしめて

「でも……!」

「本当に……やめて……
 少したてば治まるから……
 ここで……大騒ぎになったら……
 黙って外に出たのが……ばれちゃ……!
 風ノ塚さん……にも……迷惑が……」

 由香里は。

 薫に……家族に黙ってここまで来ていたんだ。

 本当は、辛いのに。

 苦しいのに。

 由香里は風ノ塚に会うために、それを隠して……!

 オレは、自分が血の気を引くほど青ざめるのを感じた。

 そんな風にまでして、由香里に愛されるなんて!!

 風ノ塚が、うらやましかった。

 力の足りない自分が、悔しかった。

 由香里もオレも報われない恋が……悲しかった。


 オレは。

 自分の視界を曇らせる、滲んできたものをぐい、と手の甲でふくと。

 そこらに置いてあった由香里の荷物を、適当にまとめて持ち、一緒に由香里を抱きあげた。

「村崎君……?」

 この騒ぎに、心配そうに厨房から出てきた風ノ塚に。

 やっぱり、今日はこれで上がる! と。

 吠えるように叫ぶと、オレは、そのままケーキ屋を飛びだした。