危険な愛を抱きしめて

 


 ……かたん


 やけに乾いた音が、ケーキ屋中に響きわたる。

 その音に見れば。

 由香里が、今まで読んでいた本を取り落としたようだった。

「……由香里……?」

 それから、本はいつまでも拾われない。

 すごく嫌な胸騒ぎに、彼女に近づけば……

 由香里は、自分の肩を抱きしめて、固まっていた。

 その、真っ青な顔色に、オレの心臓がとび跳ねる。



 発作だ……!


 オレは、持っていたケーキセットのトレイをカウンターに乱暴に置いて、由香里に駆け寄った。

「由香里!」

「雪……」

 よほどカラダ中が痛むのか。

 かすれる声が、痛々しかった。

「由香里、発作か!?
 待ってろ!
 今、救急車を……!」

 あわてて飛びだそうとするオレを、由香里が止めた。

「ヤメ……
 救急車はイヤ……!」