危険な愛を抱きしめて


「僕が~~
 まぁ、ちょっとは有名なのは~~
『パテシェ』って言う、すごく狭い世界と~~
 ケーキ屋のご近所さんくらいで。
 しかも、隣に住んでる方でさえ~~
 一度も僕のケーキを食べたことがなければ~~
 この店は。
 なんか、人が集まって騒いでく、厄介な場所でしかないです~~」

「そんな……!」

「ですから~~
 ただの『厄介な場所』でおさまらないように。
 僕のケーキを一人でも多くの人に食べてもらえるように、宣伝をしていくことは~~
 おいしいケーキを作っていくのと同じくらい、大切なんですよ~~?」

 風ノ塚は。

 間延びしている口調のくせに、きっぱりとしてゆるぎなく言った。

「どんなに、高い理想があったとしても~~
 現実って、そう、甘いものでは、ありません」

 そう、オトナの顔をして言われれば。

 オレだって黙ってうなづくしかないじゃねぇか。

 ……だけどな。

「宣伝が、大事なことがわかったが。
 何も、オレがこんなカッコをしなくても……!
 雑誌や、テレビを入れて、CMした方が、確実だ!」

 オレが叫ぶと。

 風ノ塚は、にやり、と笑った。