「そっか……」

 オレ自身もよくわからねぇ、将来(さき)のことを。

 由香里は真面目に聞いて、うなづいた。

「雪にしか出来ない。ココロの震える『何か』か……
 そんなことが早く、見つかるとイイね?」

 そう言ってくれる由香里の顔は。

 すごく、すごく優しくて。

 もちろん。

 化粧なんざしなくても、本当にキレイで。

 きっとオレが、由香里のコトを好き、な理由は。

 ここにあるんじゃねぇかなって、思う。

 抱きしめたくても、たぶん。

 触れれば壊れてしまうだろう繊細なカラダと。

 もっと繊細な、オレたちの関係を崩したくなくて。

 オレは由香里から一歩離れて、笑った。
 
「本当に自分が何をやりたいかは、わからねぇけど。
 今、一番オレの理想に近いのは『パテシェの道』かもしれねぇな」

 そう、口に出してみたら。

 なんとなく、その気になってきた。

「どっちにしろ一年間、オレは暇だし。
 試しにやってみようかとは、思ってる」

 由香里の前で、風ノ塚の話を出したくねえから言わねえが。

 オレが唯一。

 一流だと認めているヤツからも、誘われていることだし。








 ……やって、みるか……