「あたし、雪と一緒に、古武術を習ってたでしょう?
 それが、昔の戦国時代からず~~っと受け継がれて来たヤツだって判って、感動したんだもん!
 歴史ってね。
 何も起こった事柄を数字で暗記するだけのものじゃないのよ!
 一年一年、たくさんの人間が生活したコトを積み重ねて続いていくことが。
 素晴らしいし、面白いんだわ!」

「ふーん。
 そんなもんかな……?」
 
「そうなのよっ!」

 由香里は、そう、熱く語るとオレに向かってびしっと拳を出した。
 
「そう、いっっつも醒めてる雪は。
 将来何になるつもりなのよ?」

 由香里に、んっ、! とニラまれて、オレは返事に困った。

「……オレは、別に何も」

 何しろ、オレは。

 本当はあと、四、五年くらいで心臓病で死ぬ予定だったし。

 予定外の手術が上手く行って拾った命を、どう使えばいいのか、よくわからなかった。

「親父に相談したら。
 とりあえず、良さそうな大学の経済学部でも出て。
 自分の仕事を手伝え、とは言ってたケド」

「ケド?」

「正直、株の値動きにも、金儲けにも興味ねぇ。
 オレはもっと。
 オレにしか出来ねぇ、ココロが震える『何か』をやってみたいんだ」