「……ちゃんと、お父様に付き添っていただきたかったら。
 さっさと手術の予定日を決めて。
 それまでおとなしく屋敷か、病院に詰めてらっしゃれば良かったのに」

「……」

「忙しいお二人を私が日本へ返してしまったことに、腹を立て、スネてらっしゃる、とか」

 言って、喜代美は、わざとらしく肩をすくめた。

 こ~い~つ~は~

 ……なんだってオレの周りには、ヒトの話を聞かねぇヤツばかりなんだ!

「だから、オレは付き添いなんざ、いらねぇって!」

 特に、喜代美!

 母親づらして付き添って。

 勝手にアップルパイなんざ焼いているあんたが、一番がいらねえけどな!

「……音雪さん。
 言葉使いが変ですよ。
 下品です」

 思わず出た本音に、喜代美が眉を寄せて突っ込んだ。

 こんな時ばかりは聞いていやがって!

 悪かったな!

 これがオレの地なんだ!

 言いたいことを普通に言ったら。

 また、なんて返されるかわかったもんじゃねぇ。

 オレは、咳払いをすると、イヤイヤ言った。

「本当に、付き添いなんていりません。
 喜代美さんも、父と一緒にお帰りになられれば、良かったのに」