オレが歩く細い道を境に。

 目の前の風景が、真二つに分かれていた。

 右手には、草原が見える。

 瑞々しく、緑色宝石のような葉が。

 斜めに射す陽の光を浴びて、地平の果てまで輝いていた。

 所々にクリスタルでできたような、名も知らねぇ花々が咲き乱れ。

 色とりどりの蝶が、穏やかに舞っている。

 そして。

 左手側は。



 ……奈落(ならく)。



 弱い陽の光では、絶対、底まで見えねぇ。

 そして、反対側の岸も、その始まりも、終わりも。

 地平線に隠れて見えねぇ、とんでもなく広い谷が。

 世界をえぐり取ったように、黒々と口を開けていた。


 そう。


 オレは。 

 草原と谷の狭間の崖っぷちを。

 今まで、歩道を頼りに延々と、歩いて来ていたんだ。