薫の言葉に、オレはため息をついた。

 ……これが。


 薬が魅せる幻だというのなら。

「……来るなら……来い……」

「………」

 薫は。

 小さく息を呑むと、再びオレにのしかかってきた。

 そして、オレを抱きしめて。

 クビに。

 はだけた胸に。

 くちづけを落とし始めた。

「……雪。
 雪……」

「………!!」

 カラダが反り返るほど。

 苦しいほど、感じてしまうのは。

 薬で疼いたカラダが刺激されたから、ばかりではない。

「かお……る。
 や……め……ろ……」

「……雪。
 もう……やめられないよ?」

「ちが……名前……だ」

「名前……?」

 オレを抱きしめたまま。

 薬につき動かされた、熱い瞳と絡み合う。

「今夜は……オレをすきにすればいい……
 しかし……そのしゃべり方で、オレを『雪』と呼ぶのだけは……止めて……くれ……」



 でないと。




 切なさで、心が壊れて、死にそうで。



 朝まできっと、保たないから。