危険な愛を抱きしめて

 



「……で…だよ……」

「! 何だ、音雪!?
 どうした?
 本当は、あまりしゃべらない方がいいんだが……!
 どこが辛いのか?」

 次に気がついたのは。

 疾走する救急車の中だった。

 酸素マスクをつけられて、その下から漏れるオレのかすれ声に、薫が反応した。

 心配そうな、ごつい顔と、見知らぬ救急隊員の顔が。

 救急車内の天井見上げる、オレの視界に入る。

 確かに。

 黙って寝てた方が、百倍楽なのは承知の上だったが。

 オレには、どうしても、聞いておかなくてはならねぇ疑問があった。

 二人のうち薫に向かって、オレは、なんとか声を出す。

「……なんで……
 オレの……付き添いが……
 ……由香里じゃなく……
 あんた、なんだ……?」

「……は?
 そりゃ、顔を切って、念のために病院に向かった風ノ塚さんより。
 お前の方がずっと重症だから、だろ?」

 薫は、真面目くさって言った。

「救急車は、二台来たんだ。
 動転して泣いている、九条のお嬢さんを除いたら。
 今後のためにも。
 何も知らねぇ由香里より。
 医療畑に片足を突っ込んでる俺が、お前に付き添うのは、当然じゃないか」

 薫の答えに、オレはうめき声で応じた。
 
「付き合ってやってるのに、そう、不満そうな声を出すな」

 薫は、冗談めいた口調で、オレはお前のイノチの恩人なんだからな!

 と、微笑んでふと、真面目な顔に戻ると口の中でささやいた。

「……ホントは、俺も風ノ塚さんと由香里を二人きりにしたくないんだが……」