危険な愛を抱きしめて

「音雪! ダメだ!」

 どうにかして、痛みの原因を取り除こうと。

 ほとんど反射的に、腹から引き抜こうとしたナイフを、薫のごつい手が止めた。

「今、そいつを抜いたら、お前は失血で死んでしまう!
 救急車は、呼んであるから、もう少し頑張れ!!」

 薫の叫び声に、由香里が答えた。

「兄貴!
 電話したのに、来るの遅すぎよっ!!」

「莫迦!
 突然呼ばれて、十分で来たんだぞ!
 良く来たと褒(ほ)めろ!
 だいたい、お前らは、なぁ……!」

 由香里と薫の言い合う声が遠い。

「う……う……」

 痛みに力尽き。

 ぐらり、と傾いたオレのカラダを薫の手が支えた。

「音雪!」

「雪!」

「村崎君!」






 辺りが急に暗くなり、冷え込んで来たような気がする。

 そこらにいた人間の上着を全部かけてもらったのに。

 心配そうな、みんなの声を聞きながら、オレの意識が、ふっと遠のいた。