今にもフォークをぶんどりかねないアヤネの剣幕に。

 由香里は。

 ケ―キ皿をひょいと持ち上げて、防戦しながら言った。

「これは、あたしの」

「ナニ、それ!」

 由香里の言葉に、アヤネは、一瞬ムキになりかけ……

 ……まるで、思いとどまったかのように、鼻を鳴らした。

「ふん!
 いいもん!
 いいもんっ!
 私はこれから。
 音雪とお家に帰って『らぶらぶ』で一緒にケーキを作るから!
 そしたら、そのケーキは私のだし!
 これから先作る、音雪のケーキもずっと私だけのモノよねっ!」

「……オレはお前と一緒に帰るなんて、言ってねぇし」

 そうさ。

 由香里には、まだ。

 オレの作ったケーキの感想を、聞いてねぇから。

 約束もない。

 見るからにあやしい言動をとるアヤネに対して。

 オレ自身としては、当然の『拒否』のはずだった。

 ……のに。

 アヤネは、みるみる青ざめ。

 その大きな目に、涙をためて言った。

「なんで!?
 悪いヒトたちに追いかけられて、困っているって言ったのに。
 音雪はそんなに冷たいの?
 私が、悪いヒトたちに連れさらわれてもいいの?」