「へぇ……
 雪が初めて作ったケーキねぇ」

 ……風ノ塚だけじゃねぇ。

 なんとなく、由香里もにやにや笑いをしているみたいに、見える。

 オレたちがケーキ作りをしている周りを、由香里は、仕事をしながら、うろうろしていたから。

 話を聞いていやがったのかもしれねぇが。

 アルバイトを終えた由香里を前にして。

 やらなくてもいいのに、思わず風ノ塚に言われたとおり、ケーキを出すと。

 変に、意味深に笑う由香里の顔が、まともに見られなかった。

「……つべこべ言わずに、食え。
 ……その……お前のために……作ったんだから」

「えっ、本当に?」

「……だから、さっさと食ってしまえ」

「……なんか、すごくリズミカルな形の……」

「うるさい!」

 これ以上何か言いやがったらやらねぇぞ、と、ニラんだら。

 由香里は、キャーこわい、なんてわざとらしく首をすくめて、オレのケーキにスプーンを刺した。

「……どうだ?」

 心配になって聞いたオレの言葉に。

 由香里は、口いっぱいに入れたケーキをもぐもぐ食べて……飲み込んだ。

 そして。

 ふふふっと笑って何かしゃべろうとしたとき。






 ……運命の事件が起きた。