「……キライなヤツだったら、何も問題ねぇのにな。
 一発殴って、夜空の星にしてやるのに」

「……何ですか?
 ずいぶん物騒な話ですね?」

 オレのつぶやく声を聞いた何も知らない風ノ塚は。

 飴をナベに放り込みながらクビをかしげた。

 まさか、それはあんたのコトだよ、とは言えず。

 オレは、厨房のいつもの席で頬杖ついて、風ノ塚に聞いた。

「なあ、あんた。
 由香里の……篠原のコトは、どう思ってる?」

 オレの質問に、風ノ塚は。

 細い目を更に細めて笑った。

「いい子ですよね~~?
 キレイで、かわいいし。
 とても不器用だけど、いつも一生懸命で、真面目ですし」

 風ノ塚の後ろで、トレイをいっぱい抱えた由香里が、ぴたっと止まった。

 オレたちの話が聞こえたんだろう。

 だけども、風ノ塚は、そのことに気づかず、言葉を続けた。

「すごく儚い妖精みたいで。
 悪人とかから守ってあげなくちゃとか思うタイプ?」

「悪人から由香里を守る!?」

 思わず、言ったオレの言葉に、風ノ塚は怪訝な顔をした。

 ……そうか。

 こいつは、由香里の本性を知らないんだ。