「全部」

 すぐに答える由香里の声に、オレの心臓が、ずきん、と痛む。

「風ノ塚さんの全部が好き。
 キレイで美味しいケーキが作れるところばっかりじゃなくてね。
 あんまり高くない背も。
 ちょっと大きい鼻も。
 ……でも、一番好きなところは」

 そこまで言って、由香里は本当にキレイに笑った。

「……いつも、穏やかに笑っているところかな……?
 風ノ塚さんが、笑っているところを見ると。
 あたしも本当に、元気が出てくるもの。
 だから。
 あたしのこの好きっていう気持ち、内緒なんだ。
 風ノ塚さんの困っている顔、見たくないから」