「だって、音雪は。
 将来、大きなコトをするんでしょう?
 他の村崎一族のヒトと同じように。
 影で日本を……
 世界を動かすような?
 それだけの家柄も、能力もあるのに、一介のパティシエ、だなんて……」

「……なんだ、それ。
 オレの家は、忍者か?
 悪の組織か?」

 あら、違うの?

 そんなコトを言って、アヤネは笑ったが……冗談じゃねぇ。

 確かに、オレの家は、世間一般とは少しばかり違うような気がするが。

 ……家の事情とやらで、自分の行く手を阻まれる、なんて。






 絶対に、イヤだ。

 そうじゃなくても、病気に縛られているのに。

 これ以上、何かに縛られるのは、まっぴらだ。