「……信じられない。
 それで、音雪は。
 バイトでもないのに、このケーキ屋さんに、毎日通っているの?」

「……いいじゃねぇか。
 オレの勝手だろ?」

 アヤネの言葉に。

 オレは、思わず頬を膨らませた。


 ……アヤネに見つかれば、面倒なコトぐらいわかりきっていたから。

 なるべくこっそりケーキ屋に通っていたのに。

 ヤツは、あっという間にオレの行き先を見つけ……乗り込んで来やがった。

 さすがに、アヤネ付きで厨房に入るわけには行かねぇ。

 しぶしぶ、いつもの厨房の席から離れてカフェの席に座ると。

「まぁ、ここのケーキは、特別おいしいのは、わかってたけどぉ?」

 なんてアヤネは、わざとらしいほど可愛く小首をかしげてオレの前に座った。

 ……けれども。


 金にあかせて、テーブル一杯に注文しためぼしいケーキが、彼女の努力を裏切っていた。