「それで花乃はいつもこの時間なの?」


大樹はもう一度同じ質問を繰り返した。


「そうだけど」

「へえ。じゃあ俺も明日からこの時間にしよ」


大樹はなぜか嬉しそうに宣言したんだけど……。


「なんで?!」


私としては大迷惑だ!


だってこの時間にされたら毎朝会ってしまう
。それに、


「いつも車で行ってたでしょ?」


何でいきなり電車で通うの?


大樹はヤケに楽しそうに、ブラックのビジネスバッグをぶらぶらと振りながら歩いている。


まるで子供の様なその態度。


もしかして……運転中にもこうやって落ち着き無くキョロキョロしたりして、車をぶつけて壊しちゃったとか?


それかうっかりスピード違反で免停になったとか?


疑いの目を向ける私に、大樹は相変わらずの甘い笑顔で言った。


「俺、幕張事業所から本社に転勤になったんだ。今日から花乃と同じ大手町勤務だよ」