「何であの男と外出なんだよ? しかもふたりきりで。また何か言われたらどうするんだよ?」

「私も行きたくないんだけど同じ顧客担当になっちゃったから仕方なく。かなり嫌なんだけどね……須藤さんは毒舌だからまた何か言ってくるかもしれないけど、スルーしておくよ」

「何であいつと花乃が同じ担当になるんだよ!」


大樹はイライラと吐き捨てる。

でも仕事じゃ仕方無いとも思ってるのか、気持ちを落ち着かせる様に、はあと大きく息を吐いてから私の腕をがしっと掴んで言った。


「あいつに変な真似されたら直ぐ逃げろよ」

「う、うん」


変なって何だろう。いくらなんでも逃げる様な事態にはならないと思うんだけど。


「あいつがまた下らない事言っても無視しろ。困ったら俺に電話しろよ」


大樹は普段は優しいけど怒ると結構命令口調になる。

その勢いに押されて私はコクコクと頷いた。


大樹はまだ完全には気が治まらないのか私の手を引きながらブツブツ文句を言っている。


「しかも何でクリスマスイブに行くんだよ」


うん、それは私も心から思っています。

須藤さんとじゃなくって大樹とずっと一緒にいたいのにな。