「花乃は仕事定時に終りそう?」

「イブ? ええと……」


スケジュールを思い出す。途端に重苦しい気持ちになって私はがっくりと肩を落とした。


「花乃?」

「イブはね、須藤さんと外出なの、しかも茨城の得意先まで。確か16時の約束だから打ち合わせの後直帰になると思うんだけど、須藤さんとふたりでだなんて憂鬱だよ」


溜息と供に愚痴を吐き出すと大樹がピタリと足を止めた。


「どうしたの?」


見上げると大樹の顔から笑顔は消えていて、代わりに眉間にシワを寄せた恐い顔になってしまっていた。


「あ、あの?」


何で急に機嫌が悪くなってるの?


「須藤ってこの前のふざけた男だろ?」


大樹は苛立った様に言う。


「うん。私の文句を言ってた人」


あの時も大樹が助けてくれたんだよね。

酷い言い方をされてショックだったけど、今幸せなせいか、私はもう気にならない。

でも大樹はそうじゃないらしく、冷ややかな怒りを滲ませて言う。